"Lascia ch'io pianga" ―『幸せをつかむ歌 / Ricki and the Flash 』を見て―
メリル・ストリープ主演の『幸せをつかむ歌*1』、何故だか、とても心に響きすぎちゃって…、泣けちゃった。
映画『幸せをつかむ歌』は、バンドボーカルとして、夢を追いかけ続けている一人の女性のお話。離婚した元夫からの電話を切っ掛けに、再び元の家族と関わり始めることになり、物語が動き始める。
主要な登場人物は以下の通り。
- リッキー*2/Ricki and the Flashのボーカル&ギター。普段はスーパーのレジ係。元夫ピートとの間に3人の子供がいる。破産手続き中。バンドメンバーのグレッグと真剣な付き合いになりそうなところ。
- ピート*3/リッキーと離婚後、モーリーン*4と再婚。何でもしっかり保存する性質、例えそれがマリファナでも、「思い出」でもしっかりパッキング。モーリーンが実家に帰省中に、リッキーに母としてジュリーを支えて欲しいと電話する。
- グレッグ*5/Ricki and the Flashのギタリスト。ギブソン・SGを愛用。離婚歴あり。リッキーを真剣に愛している。
- ジュリー*6/リッキーとピートの長女。離婚で自殺未遂。心のリハビリ中。
- ジョシュ*7/リッキーとピートの息子。エミリー*8と婚約中。
物語は、Ricki and the Flashのライブシーンから始まる。場所は、小さなバーのステージ。オープニングを飾るナンバーはAMERICAN GIRL ♪ 一曲目の演奏が終わるとバーの馴染みのお客たちは大盛り上がり。スクリーンを見ていた私の気分も大いに盛り上がって、思わず拍手したくなってしまったくらい。その後も暫くはライブパフォーマンスが続いて、なんだか超小規模なライブビューイングを見てるみたいで楽しかった。メリル・ストリープ演じるリッキーの少しハスキーでパワフルな歌唱が、とても魅力的。今まで、私が見たことない「メリル・ストリープ」という感じだったから、今更ながら改めて「メリル・ストリープ」ってやっぱり凄い!って衝撃を受けてしまった。それに、他の映画で見た時よりも随分と若々しい感じもして、メリル・ストリープって実際は何歳くらいなんだろう?と不思議に思ってしまったくらい*9。今まで「カメレオン俳優」って言葉を知ってはいても、一度も使ってみようなんて思ったこともなかったけれど、この言葉って、メリル・ストリープみたいな人にこそ使うべき言葉なのかな?なんて初めて思っているところ。本当に、メリル・ストリープって見る度に、違う人みたい!
(こ…これは…(;・∀・)カ、カメレオン…っ、か、関係ないか…。)
(…えへへ。下手だけど、カメレオン描いてみたから一応アップロードしとく。)
冒頭のライブシーンだけでも、もう相当楽しかったけれど、流石に冒頭部分では泣かなかった。じゃあ、一体どのシーンで泣けちゃったんだろう…?少しばかり、列挙してみよう。
【泣けちゃったシーン一覧】
- ジュリーが、リッキーに自殺未遂したことを打ち明けたドーナツ店での2人の朝食シーン
- ピート、ジュリー、愛犬シグマに、リッキーが自作のCold Oneを弾き語りするリビングでのシーン
- 生みの親リッキーと育ての親モーリーンがジュリーをどう支えるかの方針で揉めた後、リッキーがバスルームで項垂れているシーン
- リッキーが、ロックスターと母親業を兼任する困難さをバーのお客たちにぶちまけたライブMCのシーン
- グレッグがリッキーに愛を伝えるシーン
- Ricki and the FlashのDrift Away演奏シーン
- ジョシュの結婚式でブライズメイド役を務めるジュリーをリッキーが励ますシーン
- ジョシュの披露宴パーティーで、リッキーの3人の子供達がステージ上に集まって、Ricki and the Flashと一緒にLet's Work Togetherを歌うシーン
思い出してみると、多分こんな感じかな。
で、中でも一番ボロボロ泣けちゃったのが、Drift Awayの演奏シーン。リッキーの元にジョシュから結婚式の招待状が届くと、リッキーは、ジョシュから結婚式に招待されたことに喜びながらも、「お金もないし欠席することに決めたの」と、バーテンダーのダニエル*10に内実を打ち明ける。そうしてダニエルと言葉を交わした後、リッキーがバーカウンターからからステージ上へ戻ると、真っ先にグレッグのギターに目が留まる。なぜなら、グレッグがいつものギブソン・SGではなく、真っ黄色のギターを肩から下げていたからだ。これは一体全体どうしたことか。リッキーが「そのギター、バナナみたいで嫌いだった筈でしょ?いつものギブソンは?」と尋ねると、グレッグは少し答えあぐね、困った様子で、(ん?)とトボけた表情をしてみせる。そこでハッとするリッキー。グレッグが、リッキーが結婚式に出席するお金を工面する為にギブソンSGを手放したことに気が付いたからだった。そんな中、Drift Awayの演奏が始まると、リッキーはグレッグの気持ちが嬉しくて仕方がないと言った様子で、もう大感激しながらパフォーマンスをする。そんな彼らのステージをスクリーンを通して見ていると、思わず私も涙涙してしまった。なんとも幸せそうなライブパフォーマンスだった。
今回、私はケヴィン・クライン目当てで、この『幸せをつかむ歌』を見に行ったのだけれど、期待した以上に、映画そのものが楽しくて、感動して。素敵な映画に出会えたことに大満足。
映画を見た後、なんとなく頭の中で、ケヴィン・クラインとメリル・ストリープが逆だったら、どんな映画になったかな…なんて想像してみたりなんかして。つまり、ケヴィン・クラインが夢を追い続けるロックスター役。試しに想像してみただけだけど、ちょっと可笑しくて笑っちゃった。だって、ケヴィン・クラインとメリル・ストリープのコンビだったら、何だってやれちゃいそうでしょ?ケヴィン・クラインだって、ロックスター役、きっと絶対にできるよね?
(ところで、どうして記事タイトルがLascia ch'io piangaにしたのか、わかる?あんまり泣けた映画だったから、有名な歌曲に因んだって訳!)