"If I could let the river overflow with my tears, ..." ―『DESTINY 鎌倉ものがたり』を見てー

 もしも、あの世とこの世とを繋ぐ「秘密の道」があったとしたなら、こっそり行き来してみたい。

 …だなんて、そんな密かな願いを心に抱いている人は、意外と、多いんじゃないだろうか。

 それは、先に逝ってしまった愛する人に会う為?、それとも、愛する人をこの世に取り戻す為?

  もう一度だけでも、家族に会いたい?恋人に会いたい?それとも、ペットに会いたい?

 理由は人其々、様々に、色々と、あるだろう。

 何を隠そう、私もそんな願いを密かに胸に抱く一人だからだ。

 

 その所為か、映画館でDESTINY 鎌倉ものがたりを見た帰り道、私の頭の中には、小野篁*1が詠んだ有名な和歌*2がふと浮かんでいた。

泣く涙 雨と降らなむ わたり川 水まさりなば かへりくるがに

小野篁」『フリー百貨事典 ウィキペディア日本語版』。2017年12月28日 (木) 04:24 UTC、URL : http://ja.wikipedia.org

 これは、小野篁が、〈三途の川の水嵩を増やすことが出来たなら、愛するあの人が川を渡って、この世へと帰って来られるのに〉と、自分よりも先にあの世へと旅立ってしまった愛する女性への思いを込めた一句である。

 こうした小野篁の強い気持ちは死者の国に届き、願いが受け入れられたのか…、篁の念願は叶い、2人はあの世とこの世とを無事に行き来するようになったんだとか。

 小野篁にとっての「秘密の道」は、かの「六道さん」だ。ドラえもんのび太の勉強机の引き出しを時間旅行の入り口として使うかの如く、篁は、京都・六波羅蜜寺の井戸から、あの世とこの世を自由に往来していたらしい。尤も、篁の場合の「あの世」とは「冥界」を指すのであって、彼はあまりに頻繁に往来した為、冥界で立身出世までしてしまったらしい。何はともあれ、例え「あの世」が冥界のことであっても、私にはこの上なく、魅力的でロマンティックな伝説に思えてならない。その六道さんの井戸は今でも現存するらしく、私も一度は訪れてみたいと思っている場所の一つである。幸運にも2014年の『栄西建仁寺』展で大きな小野篁像には直接対面できたのだが、井戸は未見なので一度は見てみたいものだ。(だって流石に井戸は、上野まで出張できないものね!)

 『DESTINY 鎌倉ものがたり』を見終えて、私が小野篁の伝説を連想してしまったのは、この映画が、あの世とこの世、そして前世・現世・来世に亘る、壮大な超時空間ラブストーリーであったからに他ならない。

 鎌倉を舞台としたラブストーリーでありながら、そこは私達が思い浮かべるような一般的な普通の鎌倉ではない。この映画の中の鎌倉は、人間と、多くの妖怪や魔物が共存する街として描かれているからである。

 映像を見ていると、山崎貴監督作品らしいキャラクター達が次々に登場するので、思わず顔が綻んでしまう。だって天頭鬼の顔を見ていると、ナキやグンジョー*3を連想せずにいられないじゃないか。(キャラクターの性格は違うけれど、ちょっとだけ似てる、よ、ね?見た目の感じとかが、少ーしだけ、ね?)

 そして、時空を超えて壮大なラブストーリーを繰り広げる新婚の一色正和・亜紀子夫婦を演じるのは、堺雅人さんと高畑充希さんだ。

 もう兎に角、高畑充希さんが手放しで可愛い。女性の私から見ても、彼女の演じる一色亜紀子には、…何て言ったらいいんだろう?…、ホントすっかりメロメロって感じ?…要は「骨抜き」ってヤツだ。(あんな可愛い表情ばっかりされたら、私でも好きになっちゃいそーじゃないか(*'ω'*)!)

 でも、可愛過ぎるって言うのは、しばしば問題を引き起こすもので、亜紀子も例外ではなかった。亜紀子は彼女自身が魅力的であり過ぎたが故に、天頭鬼なる魔物に見初められてしまい、黄泉の国へと連れ去られてしまうことになるからだ。その所為で、亜紀子の魂と身体は完全に分離してしまい、現世に於いて亜紀子は死んだものとして認定されてしまう。悪い魔物の悪戯で、愛し合う一色夫妻は、突如、あの世とこの世に引き裂かれてしまうのだが…。正和は、亜紀子のことを諦める気など更々なかった。ひょんなことから、自宅で発見した、有名作家の古い未発表原稿を頼りにして、正和は黄泉の国へと入る手立てを見つけ、早速、亜紀子を奪い返しにあの世へ向かう決意をするのだった。

 この映画で、あの世とこの世を繋ぐ「秘密の道」として登場するのは、なんと宙を走る線路だった。或る決まった時刻になると、どこからともなく線路と列車がひょいと現れ、この世からあの世へと渡ることが出来るという訳なのだ。

 正和は多少頼りなくも見える作家先生なのだが、亜紀子を自分の元に再び取り戻す為ならと、一時仮死状態になることさえ厭わず、死者たちが乗り込む列車に同乗するのだった。

 一見すると柔和だが、実は、芯の強さなら誰にも負けぬ、鋼にさえ勝る…、そんなタイプの男性像を演じさせたら、やはり堺さんはピカイチのようだ。もはや十八番と言ってもいいだろう。それにまた、正和が亜紀子を背中に庇いながら、天頭鬼と戦う剣術シーンが、本当にいいんだな、これが。

 こうして2人力を合わせて、魔物に立ち向かうその姿が、前世での2人の姿と次第にオーバーラップするような映像へと変化して行き…、見ている私達に、2人が何度生まれ変わっても運命の相手であることを暗に伝えてくれる。「運命の相手」の存在を信じさせてくれるような、なんともロマンティックなシーンの一つだった。

 そして更に、エンディングテーマが、またまた、ぴったり合っていて、とても良いのだ。その曲とは、宇多田ヒカルさんが歌う『あなた』だ。映画を見て以来、私はこの曲にすっかり嵌ってしまっている。いつも思うことだが、映画と音楽の世界観がぴったりと合っていること程、嬉しいことはない。感動したままの素敵な気分で、映画館を後に出来るからだ。


宇多田ヒカル 『あなた』(Short Version)

 ところで、冒頭で紹介した小野篁の和歌。英語に訳してみたら、どうなると思う?ちょっとだけ自分なりに考えてみたのだけれど。こんな訳はどうだろう? 

 "If I could let the river overflow with my tears, my love would come back home from the other world."

 どう?これじゃニュアンスが伝えきれてない?

 一応、「仮定法過去」ってヤツを使ってみたつもりなんだけれど、なんせ私の英語レベルが…、問題で。

 ね。 


「DESTINY 鎌倉ものがたり」予告2

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 - the world without u is boring..., don't u think so ?

*1:802-852年。平安時代前期の漢学者であり、歌人小野妹子の子孫。身長は六尺二寸もあったらしい。

*2:古今和歌集』より。

*3:『friends もののけ島のナキ