2016年、最後の最後は…。 ―『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』を見て―

今年は一体、何回くらい、映画館に行ったんだろう?、と。

半券を数えてみると、ぴったり50枚あった。

ということは、ほぼ週に一度のペースで映画館に行ったようだ。

2016年は、結構、沢山、映画館で映画を見れたんだなあ。

今年も素敵な作品との出会いが一杯あって、楽しかったな。

50本の中には、「これは何度でも見たいくらい面白かった!」って映画ばかりじゃあなくって、「何でこんな映画、見に来ちゃったんだろう…」って映画も正直あったけれど。

今年最後の最後、50本目に鑑賞した映画は、嬉しいことに「アタリ」の映画だった。

感動したなあ!見に行って良かった!

 

その50本目の映画とは。

イーサン・ホーク主演の『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE*1という作品だ。

イーサン・ホークが、あの、ジャズトランぺッターでジャズヴォーカリストの、チェット・ベイカーを演じるとのニュースを聞いたのは、確か昨年だっただろうか?それ以来、この映画の公開をずっと待ち焦がれていた。

もう本当に待ちくたびれるくらいに、待って待って待って…。

やっと公開となったのが今年11月末。

公開と同時に見に行く筈が、タイミングが合わなくって、なかなか見に行けずに、ずるずると年末を迎えてしまったが、漸くこうして見に行くことが出来た訳だ。

危うくスクリーンで見るのを見逃しかねないところだった、危なかった。

 

たった今、この『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』のことを「アタリ」の映画だった、と言い切ったばかりで何だが…。

実のところ、映画が始まって数分の間は、私は少し落胆した気分でスクリーンを見つめていた。それは、「私の好みじゃない、『ハズレ』の映画かもしれない」と早計な判断をしてしまっていたからだ。

冒頭部分で、映像がカラーからモノクロに転換すると、イーサン・ホーク演じるチェット・ベイカーのライブシーンが始まるのだが、その一連のシーンを見て、私は、「なんだか…。軽い感じだなあ。こんなライブ映像じゃ納得いかないなあ」と、思ってしまったからだった。

暫くすると、映像がモノクロからカラーへと転換する。そこで、モノクロだった意味がはっきりと分かる…、モノクロだった訳は、要は、劇中劇だったからなのだ、と。

「ああ、そうだったのか。ここは少々わざとらしくても構わなかったんだ。この調子で進む訳じゃないんだ」と納得し、心底ホッとした。

その後に続くシーンは、わざとらしさなんて微塵もないリアルを感じられるシーンの連続で、もう二度と、私の頭の中に余計な批評が浮かぶことは無かった。

もうすっかり、作品の世界に没頭したまま、映画を見続けることが出来た。

 

映画では、全盛期を過ぎたチェット・ベイカーの血反吐が出るような復活劇を描く。

血反吐…。大袈裟でなく、文字通りそのままの意味で、チェット・ベイカーは、顔面、血まみれとなってしまうことになる。

ドラッグ絡みのトラブルで、襲撃され、顎を砕かれ、その上、前歯までも失ってしまったチェット・ベイカーが、ジャズトランぺッターとして再起するまでを描く物語なのだ。

と同時に、チェット・ベイカーを親身に支える女優ジェーン*2とのラブストーリーでもある。

ジェーンに捧げるMy Funny Valentineが披露されるシーンでは、彼の気持ちの乗った歌声に、心が揺さぶられ、涙が出た。きっとこの映画を見た多くの人がこのシーンをハイライトの一つに挙げるんじゃないかなあ?、なんて思うくらい、それくらいイーサン・ホークの歌声は素晴らしく良かったと思う。その瞬間のチェット・ベイカーの気持ちを見事に再現し演じきった感動的なパフォーマンスだった。

勿論、トランペットソロ部分も本当に良かった。トランペットの音色が、演奏者の息遣いも含めてのものであることを再認識した。これは誰の吹き替え演奏だったんだろうか?とエンドクレジットを凝視すると、David Braidという方による演奏のようだ。

 

果たしてチェット・ベイカーは、ドラッグと決別し、クリーンで居続けることはできるのか?

ジェーンとの未来は?

そして、ジャズマンとしての名声は取り戻せる?

その全ての答えが明らかになるのが、ラストシーン。ジャズクラブ「バートランド」のステージに立ったチェット・ベイカーの手の動きだった。

チェット・ベイカーは、一体どんな未来を選択するのか…。

ステージ上でパフォーマンスを披露するチェット・ベイカーが、ふと片手で自分の顔をなぞる仕草を見せた時、彼の選んだ未来が分かって、ハッとした。彼は、やはり、その未来を選ぶんだな、と。

この描き方がシンプルで、心にズシンと響いた。物凄くいいシーンだと思った。

このシーンが、私はとても好きだ。

手の動きに注目!

 

イーサン・ホーク、素晴らしい俳優として、また新たな顔を見せてくれた気がした。

チェット・ベイカーを演じる彼の背中の丸まり具合や姿勢がなんとも良くて…、彼の演技に痺れたなあ…。

今までのイーサン・ホークの出演作、全部見てる訳じゃなくて、いくつか見たことがあるだけなんだけれど、やっぱりイーサン・ホークっていいな、好きだな。

改めてそんな風に思わせてくれる素敵な作品だった、この『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』という映画は。

 

今年の最後の最後に、いい作品に出会えた。

また来年もいい作品に出会えますように。

 

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 ―  指輪の代わりに、これをあげる、、。 

 

*1:原題は、Born to Be Blue

*2:演じるのは、カルメン・イジョゴ