- comme l'ambre -

2015年12月1日開設

46(寄る)年波 ―『さざなみ』を見て―

切っ掛けは、単なる「記憶違い」

ふと「フランス語でも聞きに行こうかな」…なーんて思って。

シャーロット・ランプリング主演の『さざなみ*1を見に行って来ました。

…ん?どういうことかと言うと。

実は以前に、シャーロット・ランプリング主演/フランソワ・オゾン監督作品のスイミング・プール*2を見ていた所為で、いつからか、私の中でシャーロット・ランプリングはフランス人だと完全に思い込んでしまっていたのです…わわわ(ー_ー)!!

記憶って、ホントいい加減で、当てにならないー!!

そんな勘違いをしちゃってただけで…。

当然『さざなみ』は全編英語だったー!

「あれー?英語じゃん!」って!

映画が始まって早々に、自分の思い込みに気が付いて、「間違えたー!」って、ガックリしてました(。・ˇ_ˇ・。)

 

そんな訳で、映画本編とは全然関係のないところで一人勝手に、モヤモヤして。

でも気持ち切り替えて本編を見て。

映画見終わった直後、映画本編にも、モヤモヤした感情を抱いちゃって。

結局この作品は、私にとって、終始モヤモヤした映画でした。

 

でも、少し時間を置いて、思い返してみると、ただの「モヤモヤ」だけでは終わらない映画だな…と思えてきたから、よし感想を書いてみよう、と。

なんだかね…少し笑える映画なのかもしれないな…?って。

楽しい笑いじゃなくて、「全くもう、どうしようもないな人間って…」みたいな感じの笑い。

 

煙に巻かれた45年

『さざなみ』は、結婚45周年を迎えるマーサー夫妻・ジェフ*3ケイトの、結婚45周年パーティーが催されるまでの一週間を描いたお話。 

 

そして、この映画のテーマ曲は、

フーン♪フフフフ♪フーン♪

って、プラターズの♬煙が目にしみるSmoke Gets In Your Eyes

 

週の初め、ジェフの元に、昔、登山で死に別れた恋人カチャの遺体が発見されたとの一報が届く。

その一報を機に、屋根裏で一人、恋人カチャとの思い出に浸り始めたジェフ。

ケイトは、ジェフのその様子を目の当たりにして、ジェフがこうしてカチャとの思い出に耽っているのが、今回が初めてではなかったことに気が付いてしまう。つまり、今までもずっと何かにつけて、かつての恋人カチャがジェフの心を占めてきたことを知ってしまうことになる。ケイトは、その事実を感じ取り、心を掻き乱されてしまう。

それでも、週末、ジェフとケイトの結婚45周年パーティーは予定通り、行われる…。

 

 

言葉と気持ちは、まさに裏腹だなって思う場面が沢山あった。

例えば…。

  • ケイト「私と出会う以前のことだから、カチャとのこと別に怒ってないわ」 →私(いや明らかに怒ってるでしょ!)
  • ケイト「ねえ、カチャと死に別れてなかったら、彼女と結婚してた?」ジェフ「結婚してたと思う」 →私(何だって?バカ正直にも程がある!この場面で正直さは必要?「カチャは関係ないよ、君こそが僕の運命の相手だよ」って言うべきところじゃない? )

こんな感じで、もうホント、裏腹裏腹!

そしてその最たるものは、パーティーシーン。これは、見ものだった。

パーティーの前に、ケイトは、確かこんな言葉で、ジェフに釘を刺していた。 

「パーティーでは上手くやってね、揉めてることを人に悟られたくないんだから」

で、実際パーティーが始まると。

ジェフは、ケイトに言われた通り、上手く立ち振る舞っている…、と言うか、寧ろ上手くやり過ぎなくらい…。ジェフの振る舞いは、かえってケイトの気持ちを逆撫でしてしまっているようだった。

「上手く立ち振る舞わなきゃ」と言ったのはケイト自身なのに、ジェフがその通りにしたら、それはそれでまた余計に腹が立つと言う…。

ケイトにとっては、かなりのジレンマ。

 

こんなに上手く取り繕えるなら、私の前でも取り繕っていてよ!って感じかな?

 

でも、夫婦って正直に自分を曝け出せる関係、取り繕わなくていい関係だからこそ、良いって面もある筈だし。

いやいや!でもでも!正直な関係であっても、最低限のマナー、相手へのリスペクトは当然必要な筈だし??

とか、色々考えちゃう。

 

やっぱり「カチャと結婚してたと思う」なんて言うのは、絶っ対に言っちゃいけない一言で。

ジェフは一線を越えちゃったんだ、と思う。

「彼女の代わりの私」とケイトに思わせてしまった。

 

たった一言で、45年を煙にしちゃうような決定的な言葉だったんだと思う。 

 

結婚45周年パーティーで、ケイトは必死に感情を抑えて、ジェフとファーストダンスをする。

一方のジェフは、やたら楽し気に肩まで揺らせちゃって、歌詞を口遊んだりまでして踊ってみせる。

なんとかジェフとのファーストダンスを踊り切ったケイトが、人前で出来得る最大限の抵抗は、曲が終わったところで、ジェフの手を振り払うようにパッと離してみせるだけだった。

ケイトの心境は?怒りで一杯?虚しさで一杯?スクリーン一杯に大写しになったケイトの表情が色んな感情が入り混じってゴチャゴチャの複雑な顔をしていた。

 

「嫉妬心」も「執着心」も解き放って

今更、年老いたジェフが、かつての恋人カチャへの思いを打ち明けたからって、ケイトは「へえ、そうなの」って軽く聞き流せたら、どんなに良かったか。

でも、みんな、なかなかそう簡単には出来ないから苦しむんだよなあー…、と。

全てを聞き流せたら、自分の気持ちをコントロール出来たら、どんなに毎日が幸せだろう…。誰かが言った嫌な言葉なんて自分の中に溜め込まなければ、毎日とってもハッピーになれるのにな。

 

映画を見終わって、モヤモヤモヤモヤしながらも、そんなことを色々と感じました。

  

それから。

嫉妬してる顔って、やっぱり嫌なものだな…って。元々顔が綺麗な俳優・女優でもあんな感じだもの。

カチャのことなんか気にしてなかった時のケイトは、とてもカッコ良く、颯爽と歩いていたのになあ。

何かに惑わされただけで、歩き方も姿勢さえも、変わってしまうなんて。

「気持ち」や「心」って見えないようだけど、実は見えちゃってるのかな…?

 

f:id:fab_1Ber:20160515190815p:plain

(煙が目にしみて涙が止めどなく流れて海になっちゃった)

*1:原題は、45YEARS

*2:2003年、原題はSwimming Pool

*3:演じるのは、トム・コートネイ