- comme l'ambre -

2015年12月1日開設

ケーリー・グラントとケヴィン・クライン ― THE コール・ポーター STORY ―

You 're The TOP !! You 're Cole Porter !!

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ジャズエイジ、ミュージカルゴールデンエイジを好きな人にはお馴染み、アメリカの有名な音楽家、コール・ポーターアーヴィング・バーリンジェローム・カーンガーシュウィン兄弟と並び称される著名な音楽家です。

コール・ポーターの人生を描いた映画に、『夜も昼も*1『五線譜のラブレター*2があります。

夜も昼も [DVD] FRT-178五線譜のラブレター 特別編 [DVD]

コール・ポーターの役を、『夜も昼も』ではケーリー・グラントが、そして『五線譜のラブレター』ではケヴィン・クラインが演じています。

どちらの作品にも、愛妻リンダ、友人モンティ*3、演出家のガブリエルなど、同じ登場人物が出てくるため、色々と見比べることができます。

両作品共に、所謂その時代の≪本当の歌手≫が登場し、歌声を遺憾無く披露していることも見所です。

しかしながら、両者は全く違った雰囲気を持つ映画です。それも面白いところです。

『夜も昼も』は、ワーナーブラザーズのトーキー映画製作20周年を記念した作品です。上品で、ロマンティックで、ハッピーエンディングです*4。かなり理想的なコール・ポーター像といった感じです。

一方の『五線譜のラブレター』は、退廃的で享楽的で刹那的。ストーリーは、年老いたコール・ポーターが自らの人生をミュージカル形式で振り返っていく形で進んでいき、「現在」と「回想」の交錯が見事です。また1946年の『夜も昼も』の試写シーンも入っています。

そしてポーター夫妻についても、『夜も昼も』以上に一層スポットを中てて描かれています。例えば、リンダが、コールの同性愛嗜好も認めた上で結婚を決めたこともはっきり言及されます。

 

初めて『五線譜のラブレター』を見た時、コール・ポーターのオリジナル楽曲にアレンジを加え過ぎなんじゃないか…と少し不安に感じました。既に『夜も昼も』を見ていたこともあって余計にそう感じたのかもしれません。

しかし回を重ねて見ていくうちに、それが実は、とてもストーリーに合ったアレンジなんだと分かりました。

『五線譜のラブレター』のストーリーは、伝記的というより、その時々の心情にあった曲、アレンジで進んでいきます。時系列にレビューショーを並べて展開する方法をとっていないため、時には大胆に進んでいくのです。ケーリー・グラント主演で『夜も昼も』という作品がもうあるにも拘らず、新たにコール・ポーターの伝記作品を製作する訳ですから、そのくらい思い切った手法でなくてはいけなかったのかもしれません。そして、その試みは見事に成功していると感じます。

 

では、具体的に曲名を挙げながら『五線譜のラブレター』について説明していこうと思います。

フレッド・アステアの歌唱で有名なNIGHT AND DAY

ここではコールと男性シンガーが密会する場面で使われます。まさか密会の場面で登場するとは意外で驚きましたが、リハーサル風景から密会シーンへと、曲に乗せて場面が移り変わっていく様は自然で映像も美しいです。

♬あまりに悲しく暗いBEGIN THE BEGUINE

シェリル・クロウによって披露されますが、曲の暗いアレンジに驚きます。なぜここまで暗く悲しいアレンジなのか。それは、そのシーンでポーター夫妻に辛い出来事が降りかかり、その心情を曲に反映しているからだと思います。

ユニークなBE A CLOWN

なんとMGM創設者の一人であるルイス・B・メイヤーがこの歌を歌い踊ります。メイヤーがコールに対して、「知的ぶらずに大衆に合わせた曲を書け」と要求するシーンで、メイヤーがBE A CLOWNを歌い踊る訳ですから、皮肉が効いていて可笑しいです。

♬素晴らしいパフォーマンスで魅せるDE-LOVELY

『五線譜のラブレター』の原題でもある歌で、コールとリンダの結婚式のシーンで流れる曲です。それを、TAKE THATロビー・ウィリアムズが見事に歌い上げています。スタンダードスタイルな感じもあって、素晴らしいです。映画を見た後、実はロビー・ウィリアムズがソロアルバムでフランク・シナトラと奇跡のデュエット*5 を果たした程のジャズボーカリストでもあると知り、更に驚きました。

♪「奇跡のデュエット」と言うと、私は真っ先に、ナット・キング・コールナタリー・コールUNFORGETTABLEのことを思い出してしまいますが、そのナタリー・コールもこの『五線譜のラブレター』に出演し、歌声を聞かせてくれています。ナタリー・コールが劇中で披露する曲は、EV'RY TIME WE SAY GOODBYEです♬

それから、もう一人、意外なところでは、アラニス・モリセット。彼女らしいLET'S DO IT, LET'S FALL IN LOVEを楽しむことができます。

 

…と、数曲列挙してみましたが、勿論コール・ポーターの楽曲を知らなくても楽しめる映画です。

本当によく練られたミュージカルストーリードラマで、面白いです。

 

勿論『夜も昼も』もオススメです。

オーソドックスなレビューショー形式でストーリーは進み、奇抜さはないけれど、安心して見られる作品です。 

*1:1946年、原題はNIGHT AND DAY

*2:2004年、原題はDE-LOVELY

*3:1946年の『夜も昼も』では、モンティ・ウーリー自身が本人役で出演している。

*4:ハッピーエンドではあるが、ラストのケーリー・グラントの複雑な表情はかなり印象的。何かを仄めかしているようにも受け取れる。

*5:アルバム『スウィング・ホェン・ユーアー・ウィニング』、IT WAS A VERY GOOD YEARでロビーとシナトラ奇跡の競演。